2024年6月19日
複雑なデザインを手軽に保存し、プリンタやソフトウェア用のデータに変換できるSTLについての全3回にわたるコラム。2回目となる今日は、当社での活用事例を中心にお伝えします。
目次
事例紹介の前に、まず一般な3Dプリンタのデータ作成方法を解説します。
CADとは「Computer Aided Design」の略称で、一般に「コンピュータ支援設計」を意味します。つまり3DCADとは、3次元での設計をコンピュータの支援のもとに行なうシステムです。
3DCADソフトを使用してデータを作成する大きなメリットとして、視覚的にわかりやすい点があげられます。対象物のイメージをつかみやすいので、複雑な構造体でも容易に把握でき、結果的に3Dプリンタでの造形も行ないやすくなるでしょう。
CG(Computer Graphic)を作成する3DCGツールを使用して、3Dプリンタ用のデータを作成する方法です。CGツールには、おもにポリゴンベースとスプラインベースの2種類があります。以下のような違いがありますが、どちらの方法を使っても作成は可能です。
ポリゴンベース:小さな三角形や四角形を組み合わせてデータを作成する方法
スプラインベース:曲面を用いてデータを作成する方法
CGツールは滑らかな曲線を表現しやすい反面、寸法を正確に算出しにくいので注意しましょう。
3Dスキャナーと呼ばれる、対象物をスキャンして3Dデータとして取り込める装置を用いてデータを作成する方法です。センサーやレーザーなどによって3Dデータにしたい対象物の座標データを取得し、ポリゴンデータに変換することで3D用のデータを作成します。
対象物をスキャンするだけでデータ化でき非常に手軽ですが、実物がない場合は使用できません。
無料でダウンロードできるSTLデータをインターネットで見つけて、使用する方法もあります。STLデータを自分で作成する必要がないという手軽さが魅力ですが、多くのSTLデータのなかから、目的に適したものを見つけ出さなければなりません。
また、個人で使用する分には基本的に問題はありませんが、ライセンスに関しては規約などを確認し、十分に理解したうえで使用しましょう。インターネットで検索をすると、無料ダウンロード可能なサイトが数多く紹介されていますので、ご覧ください。
当社では、3Dプリンタの造形データの作成に使用しています。例えば造形方向、数量、配置の調整や造形に必須であるサポートの設計ではSTLデータに変換されたデータを使用しています。
本コラムの前編でもSTLデータの特徴を解説しましたが、STLデータを使用する利点としては、小さな三角形(ポリゴン)で構成されているため、細かく境界を指定でき、結果としてサポート設計を細かく設定できることが特徴です。
しかし、形状が複雑になればなるほどポリゴン数は増え、膨大なデータ容量になってしまいます。3Dプリンタならではの形状であるラティス構造では、微細なラティスを設定してしまうとソフトが追い付かず設計自体が不可能な事態になるので、データ容量の観点から注意が必要です。当社ではラティス構造は球面も三角数を単純化できる角柱の格子を選択するようにしています。
また、検査の場面でも活用しています。当社では外観寸法の測定を3Dデジタイザで形状をデータ化しますが、スキャンしたデータもSTLで出力されます。スキャナーにより無数の点データが取得され、ポリゴンで結合され形状が表現されます。このポリゴンとCADの設計データを照合することで設計値との差異を寸法として測定できます。
STLデータを使いこなすためにはCADとの違いを理解することが必要です。STLデータは前述の通り、三角形によるポリゴンデータになります。三角形同士の結合状態や精度(三角の細かさ)等による影響やCADデータとの形状表現方法の違いを理解することで活用の幅を広げることができると考えます。
中編は、如何でしたでしょうか。続く後編では、おすすめのSTL編集ソフトを紹介する予定です。皆様からのSTLについての質問もお待ちしています。問い合わせ欄から、お気軽にリクエスト下さい。