2024年6月12日
3Dプリンティングに携わっている方であれば、STLファイルのことはご存じだと思います。複雑なデザインを手軽に保存し、プリンターやソフトウェア用のデータに変換できる優れものです。JAMPTでも、使い勝手の良さから実際のオペレーションでもよく使用しています。
そんなSTLについて、3回に分けて、さまざまな角度からご紹介するのが今回の企画です。初回は、そもそもSTLとは?ということで、特徴などの基本的な事柄について解説していきます。
STLデータの概要や、STEPデータとの違いを解説します。
STLデータとは、CADや3Dプリンティングにおけるファイルフォーマットの一つ、特に3Dプリンター業界で多く使用されるものです。3Dプリンティング技術である「STereoLithography(光造形法)」の頭文字が由来とのことですが、「Standard Triangle Language」の頭文字という説もあるようです。
さて、STLデータでは、モデルのサーフェスの形状を描くために、小さな三角形(ポリゴン)を大量に用いて立体的な集合体にすることで、3次元の形状を表現します。デザインが複雑になるほど使用する三角形の数が増え、解像度も高くなります。
また、STLデータには、アスキー形式とバイナリ形式があります。アスキー形式は可読性があるので利便性は高くなっていますが、読み込みが遅い点に注意が必要です。これに対して、バイナリ形式は可読性がありませんが、アスキー形式と比較して読み込みが速いのが利点です。なお、STL画像は拡張子が「.stl」であり、色とテクスチャがないのが特徴です。
1987年に発明家のチャック・ハル氏の設立した3Dシステムズが世界初の光造形 (SLA: StereoLithographic Apparatus) マシンであるSLA-1を発表しましたが、この開発にあたり、同氏がSTLファイルフォーマットをつくりあげました。STLは、ファイル形式の公開後も大きな変更はなく、いまでは3Dプリンティングの世界のスタンダードとなっています。まさに、3Dプリンティングの歴史そのものといっても良い存在なのです。
このSTLデータに並びよく聞くデータ形式として、STEPデータがあります。STPとも呼ばれます。Standard for the Exchange of Product Dataの略で、ISOの標準規格とされる中間ファイルフォーマットです。CADソフトにはさまざまな種類がありますが、CADソフト同士に互換性がない場合、そのままではお互いのデータを使用できません。その際、各CADソフトの橋渡し役になるファイル形式が中間ファイルフォーマットなのです。これにより、異なるCADソフトで設計したデータをやり取りできるようになるのです。
STEPデータは、複数のCADソフトに対応し互換性が高い分、ファイルのデータ量が多くなるのが難点と言えます。データ量が多すぎると、再現性が低下することもあるので注意したいところです。
一方、STLデータは、STEPデータと比較して少ないデータ量で収まるのがメリットですが、形状の再現性はSTEPデータより劣ります。
前編では、既に3Dプリンティングに携わっている方はご存じの概要的な情報が多くなってしまいましたが、如何でしたでしょうか。続く中編では、JAMPTの製造部員による実際の使用例をご紹介する予定です。皆様からのSTLについての質問もお待ちしています。問い合わせ欄から、お気軽にリクエスト下さい。