金属3Dプリンターで用いられるポーラス構造とは

2024年9月17日

ポーラス

金属3Dプリンターを用いて造形される立体形状の一つに、ポーラス体があります。ポーラス体は、多数の孔をもつ構造で人為的に造形欠陥(未溶融欠陥)を増加させる方法で作製します。従来新規材料の多くは合金化、熱処理、塑性加工、粉末焼結などの手法を応用することにより新たなる機能性を作り出してきました。

また、材料品質を高める為に空隙を極力少なくするよう高密度化を実施してきましたが、これに対しポーラス材料は逆に欠陥や空隙を有効利用し、その形態をコントロールして低密度化を図りながら新規材料とするものです。

ポーラス体は、欧米で積極的に開発研究が行われ、現在軽量化目的はもとより熱交換また吸音性,衝撃吸収性,濾過性などを目的として採用されていて、今後も多くの用途での活用が期待されている構造体です。

特に3Dプリンティングでは必要な部分だけをポーラス体にすることができるという点が従来工法とは異なる特徴です。

具体的には、造形のパラメータである、出力(POWER)、走査速度(Speed)、走査間隔(Line Pitch)を以下の計算で計算したエネルギー密度(E)をコントロールすることによって造形の充填密度(空孔密度)を調整することができる、すなわち均質かつ制御性に優れた構造を得ることが可能になります。

ポーラス体は部位によって必要とされる空孔率、空孔径及び形状が異なり、活用する場合は、製品全体と同時にポーラス金属部材の設計も必要になります。構造部材であれば、荷重負荷方向に強度を保ちつつ不要な肉を削いでいくトポロジー設計等も実施しながら、それを実現する製法を考えるカスタムメイドで製造されるのが一般的となっています。

まとめ

以前は、ユーザー側から見た「理想的なポーラス金属」とメーカーが供給できる「造形可能なポーラス金属」の乖離がありましたが、3Ðプリンティング活用することによりその課題が克服されつつあるようです。

直近の活用検討事例としては、世界各国でCO₂排出規制やカーボンニュートラルが推進される中、冷却の省電力化や回収熱のリユースなどの熱マネジメントが重要性を増していて、ポーラス体の活用がそれらニーズに見合ったものとして注目され、スーパーコンピューター等への適用も具体的に検討されているようです。

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