第4回次世代3Dプリンタ展 視察レポート


今回のコラムでは、2022年3月16日(水)~18日(金)の間、東京ビックサイトで『日本モノづくりワールド2022』の一部として開催された展示会『第4回次世代3Dプリンタ展』を当社の社員が視察して来ましたので、その一部をご紹介します。
目次
コロナ禍における開催
今回の展示会は、新型コロナ感染症の影響によって2021年度の開催時期が遅れたもので、2022年6月22日(水)~24日(金)に同じく東京ビックサイトで『第5回次世代3Dプリンタ展』の開催が予定されています。当社はこちらへの出展を予定していますので、是非ともご来場をお待ちしております。
金属3Dプリンター装置
日本電子(株)
2021年「十大新製品賞日本力賞(にっぽんぶらんど)」を受賞した電子ビームパウダーベッド方式(EB-PBF)の金属3Dプリンター(JAM-5200EBM)のモックアップ機が展示されていました。同装置は、従来の海外製の電子ビーム方式の金属3Dプリンターに比べて、電子顕微鏡メーカーならではの高精度な電子ビームの制御技術と、造形発生源となるカソードの長寿命化を実現している点、また昨今供給不安のあるヘリウムガスを使用しないプロセスとなっている点が特徴です。
また、チタン合金製の大型造形物や、造形時の予熱過程により、応力除去のためのサポートが少なくて済む電子ビーム方式ならではの特徴を活かして、造形物を縦方向に積み上げて多数個を同時に造形したサンプルなども展示されていました。 更に、最近当社でも力を入れている銅造形に関して、純銅粉末での小型コイル形状のサンプルも展示されていました。

(JAM-5200EBM)

三菱電機(株)
金属ワイヤーを材料としてレーザーで溶融するワイヤー・レーザーDED方式の金属3Dプリンター(AZ600)の実機が展示されており、実際の造形デモも行われていました。
また、造形物サンプルとしては、チタン合金製のロボットアーム部品や、アルミ合金(5000系)のウォータージャケットなどが展示されていました。
DED方式はパウダーベッド方式と比べて造形時間が非常に短く、高速での造形が可能ですが、ニアネットシェイプ(完成形に近い形状)に造形した後に機械加工で仕上げることを前提にした工法です。また、材料に金属粉末ではなくワイヤーを使う方式では、材料の管理が容易かつ安全性にも配慮しやすく、機械も比較的クリーンな状態を保つことができます。更に同装置では、世界初の空間5軸対応(X/Y/Z+回転2軸)となっており、ワイヤー供給、レーザー出力、5軸動作を高精度に制御するところが特徴です。 また、装置の展示はありませんでしたが、電子ビームパウダーベッド方式の金属3Dプリンター(EZ300)の造形サンプルも一部展示されており、こちらにも純銅造形について紹介されていました。


愛知産業(株)
イスラエルのベンチャー企業・トライトンテクノロジー社が開発したモールドジェットという新しい金属3Dプリンターがパネルで紹介されていました。 まだ国内での導入事例は無いそうですが、型(モールド)を造形して、そこに金属を流し込むこれまでにない新しい方式の金属3Dプリンターで、1,600cc/hでの高速造形が特徴とのことです。(通常のパウダーベッド方式では10~100cc/h程度)


エス.ラボ(株)
昨年12月に発表された材料押出方式(MEX)の金属3Dプリンター(GEM200DC)の実機が展示されていました。
同装置は、TRAFAM理事長の京極秀樹先生の近畿大学と、熱処理炉等のメーカーである島津産機システムズ㈱、コンパウンド材料メーカーの第一セラモ㈱とエス.ラボ㈱の国内企業4社が共同開発した金属3Dプリンターです。
同方式では、金属射出成型(MIM)のように材料に金属を含む樹脂ペレットを使用し、積層造形した後に脱脂・焼結を行うことで金属部素材を製作することができます。 金属3Dプリンター活用のボトルネックの一つでもある材料の選択肢を増やしていくことで、国内での普及を目指していくとのことでした。

エス.ラボ製 MEX方式金属3Dプリンター(GEM200DC)
金属3Dプリンター材料
JX金属(株)
金属3Dプリンター造形用の材料として、電子ビーム方式で造形しやすい純銅粉末(開発中)や、医療機器用のタンタル・ニオブ系粉末、また同社の材料をレーザー方式(LB-PBF)で造形した純銅製のヒートシンクなどが展示・紹介されていました。 また、従来の加工では取り扱いが難しく、当社にも金属3Dプリンターでの造形依頼が増えつつあるハイエントロピー合金(狭義には5 種以上の元素が等量含まれる合金とされる)のカスタマイズ粉末製造も対応可能とのことでした。



総評
- 新型コロナ感染症まん延防止等重点措置の期間中での開催ではあったものの、主催者発表によると3日間で約2万人の来場者数となっており、展示会会場は以前の賑わいを取り戻しつつあるように感じられました。
- 『日本ものづくりワールド』における他の併設展示も数多くあり、全体としての情報量は非常に充実していましたが、新しい3Dプリンター技術に関する展示は以前に比べると少ないように感じられました。(来訪者側はようやく展示会にも出張・参加できる環境となってきているのに対し、出展者側は過去2年の展示会における来場者数の減少を踏まえてまだ一部様子見しているといったところでしょうか。)
- また上記はしていませんが、ソフトウェアやRPA(Robot Process Automation)、製造業における情報管理システムなど、デジタル化やDXに関する展示が目立っていました。